全日本ヒプノセラピスト協会の職業倫理基準

序文

全日本ヒプノセラピスト協会(AJHA)の認定・登録のもとで活動する人は、だれもがこの倫理規定を守ります。本規定は、AJHAに関わる専門職が大切にする価値観と行動基準をわかりやすく示し、ヒプノセラピー・コーチング・トレーニングの実践が、個人と社会にとって有益で、誠実で、専門的なものになることを目的とします。この規定は、セラピーやコーチングの正式な契約があるかどうかに関わらず、専門家としてふるまうあらゆる場面に適用されます。

適用範囲(対象者)

この規定は、AJHAに登録・認定・加盟して活動する、次の人たちに適用されます。

  • ヒプノセラピスト
  • コーチ/コーチ・スーパーバイザー/メンター・コーチ
  • トレーナー(講師)
  • トレーナー養成課程の受講生
  • 教育・認定機関の運営・管理に関わる人

本規定に同意することで、上記のすべての関係者は、たとえ難しい判断や勇気が要る場面でも倫理基準を守り抜くこと、そしてクライアント・受講生・協働者・社会からの信頼に応えることを約束します。

セクション1:クライアントへの責任

  1. 事前説明

初回面談の前または当日に、次のことをわかりやすく伝えます。

  •    サービスの内容と目的/期待できる効果と限界
  •    守秘の範囲
  •    料金・支払い・キャンセル条件
  •    そのほかの約束事項

質問の時間を必ずとり、理解を確認します。

  1. 合意書(契約書)の作成

セッション開始前に契約書を作り、次の点をはっきり書面化します。

  •    関わる人の役割・責任・権利
  •    連絡方法と進め方
  •    記録の扱い
  •    フィードバックの方法
  •    終了条件

当事者全員の理解をそろえます。

  1. プライバシーと法令順守

個人情報と記録は厳重に守ります。関連法令(個人情報保護など)を守り、データは安全に保管し、アクセス権は必要最小限にします。

  1. 情報共有と進行の明確化

何を記録し、誰と共有するのかを事前に伝えます。宿題やフィードバックの流れ、セッションの進め方も示し、いつでも確認・質問できる状態を保ちます。

  1. 守秘の例外の説明

次の場合は、必要最小限の情報を適切な機関へ伝えることがあります。

  • 違法行為が疑われるとき
  • 法令や裁判所命令に従う必要があるとき
  • 自傷や他害の恐れがあるとき

これらの可能性は事前に説明し、可能な限り事前または事後に本人にも知らせます。

  1. 記録・データの安全管理

クライアントの記録は、機密性・安全性・プライバシーを最優先で守ります。法令順守:個人情報保護等の関連法令・ガイドラインに従います。適切な運用:保管・共有・破棄の方法を明確にし、アクセス権は必要最小限に限定します。テクノロジー利用:オンライン面談やアプリ等は、安全なツールを選び、パスワード管理・アクセス制限・暗号化を行います。事前説明と同意:利用する仕組みとリスクを事前に説明し、クライアントの同意を得ます。

  1. 終了の権利を尊重する

契約(合意書)に基づき、当事者はいつでも、どのような理由でもサービスを終了できます。終了時の手続、費用の扱い、記録の保存・破棄・移管、必要に応じた紹介(他機関・他専門家)などは、事前に合意書へ明記し、透明性と説明責任を守ります。クライアントの選択の自由を尊重します。

  1. 立場や影響力の差への配慮

年齢・肩書・経済状況・文化的背景・人間関係の力学・心理的要因などにより、権威や立場の差が生じることがあります。コーチ/セラピストはその影響を自覚し、言葉づかい・説明の仕方・意思決定の進め方に配慮して、公平・敬意・支援のある場をつくります。無理な同意や誘導は避け、十分な情報に基づく同意(インフォームド・コンセント)を徹底します。必要に応じて通訳、わかりやすい資料、適切な休憩、第三者同席などを整え、安全で参加しやすい環境を確保します。

  1. 紹介時の利得の開示(透明性の確保)

クライアントを第三者(医療・心理・法律・他サービス等)へ紹介する際、コーチ/セラピストが受け取り得る紹介料・手数料・割引・物品提供など一切の利得を事前にわかりやすく開示します。あわせて、紹介しない場合の選択肢や他の候補も提示し、クライアントが十分な情報に基づいて意思決定(インフォームド・チョイス)できるようにします。開示内容は合意書や記録に明記し、専門的関係の開放性・信頼・透明性を保ちます。

  1. 報酬額にかかわらない品質の維持

有料・減額・無償(プロボノ)・奨学枠など、報酬額や支払い形態に関係なく、提供するトレーニング/コーチング/セラピーの安全性・倫理・専門水準を一貫して維持します。セッション数や提供範囲に制約がある場合は、品質を下げるのではなく、あらかじめ提供範囲(回数・時間・対象領域)を明確化して調整します。焦点はつねにクライアントの成長と成果に置き、財務条件より専門性・有効性を優先します。

セクション2:実務・職務遂行に関する義務

  1. 倫理規定の順守と報告

私は、すべてのセラピー/コーチング/トレーニングにおいてAJHA職業倫理規定を守ります。もし自分の違反の可能性に気づいたり、他の専門職の非倫理的行為を見聞きした場合は、まず当事者に敬意をもって直接伝え、解決を試みます。解決しないときは、AJHA(倫理委員会または事務局)へ正式に報告します。

  1. 支援スタッフの倫理順守

事務局・アシスタント・運営スタッフなど、すべての支援者は本規定を理解し、日々の業務に反映させます。これにより、組織全体として誠実性・信頼・プロフェッショナリズムの文化を維持します。

  1. 継続的な学習と専門性の向上

卓越性の追求を掲げ、定期的な学習や研修で知識・技能を更新します。関連分野の最新動向も継続的に把握し、実践に生かします。

  1. 限界の自覚と適切な対応

体調・専門領域・利害関係など、有効性を損なう恐れのある要因を自覚します。必要に応じて外部の助言やスーパービジョンを受け、最善の対応策を慎重に選択します。

  1. 利益相反への対処(休止・終了を含む)

利益相反、またはそのおそれがあるときは、まず関係者に正直に伝え、話し合います。必要に応じて外部の専門家の助言を受けます。状況によっては、関係を一時停止したり、契約を終了したりします。この対応は、懸念を開示し、第三者の視点を取り入れて、倫理性と透明性を守るためのものです。行った対応は簡潔に記録し、必要な範囲で関係者に丁寧に説明します。

  1. 会員情報の機密保持と適正利用

AJHA会員の個人情報と連絡先(メール・電話など)は、AJHAまたは当該会員の承認がある場合のみ使用します。利用目的を必要最小限に限定し、第三者提供や営業目的の利用は事前同意がない限り行いません。情報は安全に管理し、保存期間を過ぎたものは適切に廃棄します。関連法令を守り、万一の事故時は速やかに報告・対応します。

セクション3:職業上の責任

AJHA 会員は、「信頼」「倫理」「法令順守」「健全な評判」「サービス品質」を土台に、職業上の責任を果たします。これは、セラピー/コーチング/トレーニングの長期的な成功と持続可能性を支える柱です。

  1. 資格・能力の自己点検と更新

自分の資格や経歴を正確に確認・提示します。知識・技能・経験・専門領域・受講した研修やスーパービジョンなどを定期的に見直し、必要に応じて継続学習を行います。AJHA を含む関連団体の認定も最新の状態に保ちます。

  1. 事実に基づく情報提供

提供するサービス内容、業界の状況、得られうる効果/限界、AJHA を通じて提供できることについて、事実に基づき具体的に説明します。誇張や断定的な表現、誤解を招く広告は避けます。

  1. 倫理の周知と共有

本倫理規定の基準と責務を、クライアント・受講生・スタッフ・提携先など関係者にわかりやすく伝え、必要に応じて書面で提示します。いつでも参照できる状態を保ち、説明や質問に丁寧に対応します。

  1. 境界線(バウンダリー)の明確化と文化的配慮

関わりの場で適切な境界線を理解し、言葉で明確に示します。

  • 身体的接触の可否や手順
  • オンラインでのやり取りの方法
  • 連絡手段・連絡可能な時間帯

などのガイドラインを事前に共有します。文化や価値観の違いに丁寧に配慮し、必要に応じて通訳・資料の工夫・休憩設定・第三者同席などを取り入れます。

  1. 受講生・クライアントとの不適切関係の禁止

受講生やクライアントとの性的・恋愛的な関係は一切禁止します。示唆・誘い・ハラスメントにあたる言動も行いません。そのような兆候や境界線のあいまいさが見られた場合は、次の対応を速やかに行います。

  • 当事者との面談と状況の記録化
  • 必要に応じた契約内容の見直し・変更・終了
  • 担当の交代や、第三者(上長・倫理委員・スーパーバイザー)への相談

常に、安全で倫理的な場づくりと、関係性の健全性を最優先します。

  1. 差別の排除と包摂性の推進

すべての活動で公正・平等を守り、だれもが安心して参加できる包摂的で公平な環境をつくります。各地域の法令や文化的規範を尊重し、次のような属性を理由とした差別を行いません(これらに限りません)。

  •  年齢、民族・人種、国籍、宗教・信条
  •  性自認やその表現、性的指向
  1. 知的財産の尊重

他者の成果を自分のものと主張しません。引用・参照は出典を正しく明記し、許諾が必要な素材は権利者の許可やライセンス条件に従います。自分が作成した資料・プログラム・メソッド等は自分のものとして明確化し、他者の知的財産との混同を避けます。これらに反する行為は、第三者による法的措置の対象となり得ることを理解します。

  1. 誠実な調査・研究と報告

調査・研究は誠実に行い、確立された科学的基準と関連分野のガイドラインに従います。活動は自分の専門性の範囲内で実施し、必要に応じて監督(スーパービジョン)や助言を受けます。結果の報告は、事実に即して正確かつ明確に行います。

  1. 社会的インパクトへの自覚と「善をなす」実践

自分自身とクライアントが社会に良い影響を与え得ることを自覚します。単に不適切な行為を避けるだけではなく、建設的で有益な行動を優先します。

セクション4:AJHA会員の倫理同意(全日本ヒプノセラピスト協会)

AJHA の専門職として、私はヒプノセラピー/コーチング/トレーニングの実践において、最高水準の倫理基準を守ることをここに誓います。本規定に違反した場合、AJHA による調査のうえ、注意・戒告・是正指示・追加研修・会員資格の一時停止/取消・認定の無効化・必要に応じた公表などの懲戒措置(これらに限りません)の対象となり得ることを理解します。

この同意は、AJHA と専門職全体の誠実性・信用・評判を守るための誓約です。AJHAは次の事項に同意します。

  • 本倫理規定および関連ポリシー(個人情報保護、苦情・通報手続など)を遵守する。
  • 関連法令を守り、守秘義務とデータ保護を徹底する。
  • 利益相反やその可能性を速やかに申告し、適切に対応する。
  • 継続学習とスーパービジョン等を通じて専門性を維持・向上する。
  • 倫理に関する調査・是正プロセスに誠実に協力する。

全日本ヒプノセラピスト協会は、本倫理基準のもと、安心・尊重・専門性を重んじる支援を提供し続けることを宣言します。


全日本ヒプノセラピスト協会(AJHA)
代表 今本 忠彦

 

PAGE TOP